A Story of The Near Future
あやしい小説

数年前に書いたあやしい小説です。

ACT1

サッカーの試合を見に行った夢を見た。 日本代表が後半ロスタイムにゴン中山のシュートで決勝点を決めたところで目が覚めた。 朝7時ちょっと前に鳴るようセットしておいたステレオからジョン・カビラの元気な声が流れていた。 J-WAVEの"TOKIO TODAY"がボクの目覚まし代わり。 ジョンはサッカーのワールドカップ、フランス大会の結果を逆上しつつしゃべっている。
「決勝戦はフランスがブラジルに圧勝!?リアリ〜???」
どうやら、ラジオの声が影響して、サッカーの夢になったらしい。 夢と現実がごっちゃになっている寝ぼけ頭を振り、目を擦りつつ体を起こす。 うーん、眠い。横からかわいい寝息が聞こえてくる。 ボクの隣にはくみがまだ眠っている。 寝顔がかわいい。 結婚してすでに2年立つのにまだそう思える。 そうだ!朝なのだ!彼女を起こさなくては! 妻の寝顔に魅とれている場合ではないのだ。 急いで階下の台所に降りてやかんに火をつけてテレビをつける。 冷蔵庫からパンと卵とベーコンを取り出し、フライパンをガスレンジに乗せる。 さて、くみを起こさなくては!寝起きの悪い彼女を起こすのは大変なのだ。 気合いで起こさないと、テコでも起きない。 寝室に戻り部屋に入るなりくみをめがけフライングボディーアタック、エルボードロップ、かけ毛布をはがし仰向けに転がしてインディアンデスロックで足を締め上げた。 自分でもうっとりするくらい流れるような攻撃だ。
「痛いじゃない!何すんのよ!!」
目を覚ました彼女はデスロックを強引にふりほどき、ヘッドバットで応戦してきた。 ゴツンというものすごい音がして目から火花が飛んだ。
「ううう。朝ですう。出勤でしゅう。痛いよう〜。」
のたうちつつ、精一杯声を出そうとするがあまりの痛さで声にならない。
「あら?なんだか焦げ臭いわね。何か焦げてんじゃない?」
しまった!フライパンをガスにかけたままだ。 のたうち回っている場合ではないのだ。 脳しんとうで目眩と吐き気がしてきた。よろよろと台所に戻り火を消した。 がーん。せっかくの料理は真っ黒に焦げていた。
「すまぬ、ベーコンエッグは中止じゃ。パンとこーしーで我慢してくだされ。」
「あら?凄いこぶ!!ごめんなさい!またやっちゃったのね。冷やさなくちゃ。」
「ボクのことはいいです。早く支度してくだされ。遅れるとあの官僚的店長にネチネチいやみいわれるよ。」
「そうね。お詫びに今夜何か買ってくるわ。」
彼女は、驚くべき素早さで朝食を食べメイクし着替えて出ていった。 アイスノンで頭を冷やしつつ、彼女の後ろ姿を見送った。 今日は、これからF・P・ウイルソンの最新作の翻訳を仕上げなくてはならないのだ。 締め切りは今日なのだ。 わしの一日はこうして始まるのであった。
(ACT2へつづく)